いよいよ『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開になる。シリーズの開始から約10年。ヒット作を次々に送り出し、世界中に熱狂的なファンを生み出してきた一大ユニバースの”クライマックス”は一体、どうなるのか? 全世界が公開を待ちわびているが、それは日頃、映画について取材したりインタビューしたりしている記者も同じこと。そこで、映画公開前にMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を長年に渡って追い続けてきた映画WEBサイトの記者が集結!

映画.comの政氏裕香さん、シネマトゥデイの入倉功一さん、ぴあの中谷祐介さんにMCU10年の思い出と最新作『アベンジャーズ/エンドゲーム』の注目ポイントを聞いた。
(以下、敬称略)

―映画界にはMCU以外にも、様々な人気シリーズがありますが、みなさんから見てMCUのどこが魅力なのでしょうか?

入倉『スター・ウォーズ』も長く続いていますし、自分も大ファンではあるんですけど、最初からリアルタイムで観てきた映画ではなくて、存在を知った時にはすでに”伝説”で、後から追いかけて観ていったんですよ。でも、MCUはその始まりから劇場で観ることができた。最初は「え? アイアンマンって誰だっけ?」って感じだったんですけど(笑)、実際に観たら「これは僕らの世代のスター・ウォーズになってくれるシリーズかも」と思えた。さらにシリーズが続いて、どんどん面白くなっていった感じです。

政氏 私も最初はユニバースの全体像がよくわからないまま観始めたんですけど、最初の『アベンジャーズ』で主役級のキャラクターが集まっているのを観て、そこからさらに面白くなっていきました。小説だとある作品の人物が別の小説に出ていることがあったりしますけど、MCUは「映画でもこういうことができるんだ」という驚きがありました。それに作品が公開されるごとにスピード感が増していって”次回作まで何年も待つ”みたいなことがなく、次から次にテンポよく新作が出てくる。それは他にはないMCUの強みだと思います。

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中谷 確かに最初の頃は、”複数の映画が同じ世界観を共有しています”って言われても、どこかで話半分に受け取っていた気がします。でも、シリーズが続いていく中で、マーベルはこれまでに観客が味わったことのない体験を作ろうとしているんじゃないか? という気がしてきたんですよ。初期の頃はそれぞれ独立した映画が順に公開されている印象でしたけど、ここ数年は明らかに”観客が前の作品を観ていて、次の映画も観る”ことを前提にシリーズが設計されている。最近だと『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が重たい結末を迎えるけど、すぐに続きを公開しないで『アントマン&ワスプ』と『キャプテン・マーベル』で観客のテンションを上げてから『アベンジャーズ/エンドゲーム』を迎える。これはMCUならではの体験ですよね。

政氏 だから翻弄されますよね(笑)。それぞれが独立した映画ではあるんですけど、どの映画も見逃せない。

入倉 僕は映画を観て、それまで知らなかった文化だったり、人生の中で気づくべきことに出会うのが好きなんですけど、大作映画でそういうものに出会うことって少ないんです。でも、マーベル映画はいつも”教えられること”が必ずあって、例えば『ブラックパンサー』を観ることで“アフロ・フューチャリズム”って考え方に出会ったり、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を観ることで”ウィンター・ソルジャー”という言葉の意味を調べたりする。ヒーロー映画ではあるんですけど毎回、学ぶことがあるし、知的好奇心が満たされるのはすごいことだと思います。

政氏 『キャプテン・マーベル』を観た時にも思ったんですけど、主人公の成長だったり変化がすごく身近で共感できるんです。それにシリーズが続いていく中でキャラクター同士が組み合わさることで化学反応を起こしていく。複雑なキャラクター設定を描いているけど、身近な存在だというのは大きいと思います。

中谷 スタン・リーが“マーベルが舞台にしているのは、窓から見える現実の世界なんだ”って言ってますけど、ヒーロー映画でありながら現実の社会だったり、共感できるキャラクターを描くのがマーベルの”真髄”なんでしょうね。いつの時代も歴史に残る映画は、普遍性がありながらもその映画がその時代に作られる必然がある。マーベル映画の10年は、私たちの生きてきた10年を反映しているんだと思います。

入倉 それこそが面白い映画の絶対条件だと思いますけど、それが出来ている映画はどれだけあるのかと考えると……やっぱり、マーベルの10年はすごいです。

政氏 意識しなくてもタイムリーな内容になっているんでしょうね。

政氏 先ほど話したキャラクターの”身近さ”につながることですけど、マーベル映画って演じる俳優さんと演じるキャラクターって、すごく距離が近い印象があるんですよ。他の映画でも”ハマり役”はあるんでしょうけど、MCUの場合は演じている俳優とキャラクターがいい感じにシンクロしている。

―おふたりも実際にキャストや監督たちに取材されてきたと思うのですが政氏さんと同じことを感じますか?

入倉 マーベル映画は実力のある俳優をキャスティングするので、別の映画の取材でその俳優さんに会ったりもするんですけど、ある映画で(キャプテン・マーベルを演じた)ブリー・ラーソンのインタビューに立ち会った時に『キャプテン・マーベル』の話をしたら、ハイタッチしてくれて(笑)。で、実際に完成した『キャプテン・マーベル』を観たら、ブリーがハイタッチしていて「あの時のまんまだ!」って(笑)

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政氏 『ドクター・ストレンジ』の取材でベネディクト・カンバーバッチにインタビューした時も、頭がキレて、少し上から目線に思えるんだけど、愛嬌がある……役にピッタリで、他には考えられないキャスティングなんですよね。

―監督についてはどうですか? シリーズの初期はキャリアのある監督が多かったですけど、近年は”新しい才能”を抜擢している印象があります

中谷 サミュエル・L.ジャクソンにインタビューした時に彼が「マーベルの製作陣は作品に合った監督を選ぶのがうまい」って言っていて、確かにここ数年は大規模な作品を手がけたことのない監督が次々に登場しています。だから最初は「どんな監督なんだろう? 大丈夫なのか?」って思うんですけど、完成した映画を観るとみんな成功している。

入倉 だからいつも、マーベルはどうやってこの監督を見つけてきたんだろう?って思いますよね。

中谷 いろんな監督に話を聞いてわかったのは、マーベルの製作陣は新人監督の”過去の実績”よりは、その映画を作りたい”理由”と、その映画を作る際の”プラン”を重視しているみたいですね。

政氏 監督もヒーローと同じように”成長物語”があるってことですね(笑)

入倉 だからその監督の過去の映画を観ると「まさかこの監督がこの後にマーベル映画を撮るとは……」って思う(笑)。でも同時に、監督のカラーだったり個性がマーベル映画になっても消えていないこともわかるんです。

中谷 あと、マーベル映画を率いているケヴィン・ファイギが言っていたのは「私たちは監督の個性を重視するけれど、周囲の人たちの意見をうまく取り込むことのできる人、一緒に協力して動ける人を監督に選んでいる」ってこと。信念や実力、個性があっても、周囲とチームを組めないと前に進めない……マーベル映画の作り手の話を聞けば聞くほど、話していることが映画の内容だったりテーマとシンクロしてるんですよね。

―長年に渡って愛され続けてきたMCUですが、昨年公開の『インフィニティ・ウォー』の結末は世界中に衝撃を与えました

政氏 お客さんが劇場に入る時と出てくる時の”ギャップ”がすごかったです(笑)

入倉 日比谷で行われた前夜祭の取材に行ったら会場にロキのコスプレをしている方とかたくさんいて、上映前に話を聞いたらみんな「楽しみです!」って答えてくれたんですけど、上映が終わってお客さんが出てきたら、ロキの格好ですごい泣いていて。僕も一緒に、わかるよ! って(笑)

政氏 私も1回目に観た時は前半に起こった出来事があまりにもショックで、映画の後半は気持ちが追いつかない状態になって……。2回目に観に行った時にやっとすべてを受け止めることができました。

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入倉 僕はヒーローものが好きなんですけど、あれは”最後に正義が勝つ”ことが決まっていて、その範囲の中で何が出来るのか作り手は考えるし、観客もその中でどう楽しむのかってものだと思っていたんです。でも『インフィニティ・ウォー』はハリウッドの超大作なんですけど、その方程式を壊してきた。そのことにすごく感動しましたし、”こんなこと実際にやってしまっていいんだ!”という想いはありました。

中谷 マーベル映画は『アイアンマン』からずっと”正義と代償”の話をずっとやってきた思うんです。だから観る前は、最強の敵サノスが出てきて、ヒーローの側がどれだけの代償を支払うことができるのか? って話だと予想してたんですけど、完成した映画で最も衝撃だったのは、サノスもまた自分の正義を貫くために代償を支払う展開になっていたこと。つまり、この映画ではヒーローと敵の境界線がなくなって、どちらもが自分の考える正義のために代償を支払う話になっている。これはすごく現代的な話だし、正直、この話の先はあるのか?と思いました。

―こうしてみなさんのお話を聞いていると、マーベルは長い時間をかけて映画づくりも扱うテーマも進化してきたことがわかりました。そしていよいよ、その長い旅が『エンドゲーム』で幕を閉じます。まだその全貌は明らかになっていないのですが、御三方はどこに注目されていますか?

入倉 ケヴィン・ファイギに何度かインタビューしてきましたけど、彼はこの先の展開や計画については、はぐらかすのが上手いんですよ(笑)。でも、彼はずっと「『エンドゲーム』でMCUのこれまでの話は終わります」ってことだけは言い続けてきた。あれだけはぐらかすのに(笑)それだけは断言している。だから確実に終わりを迎えるとは思うんですけど一体、何をもってこの話が終わりになるのかはわからない。これは僕が今までに出会ったことのない状況です。

政氏 とは言え、この映画の後もまだ新作が控えていそうな感じもするので、ひとつのシリーズをどうやって終わらせるのか? そして次のシリーズがもしあるとしたら、どうやってつなげるのか? その辺りがすごく気になりますよね。個人的には『インフィニティ・ウォー』に出てこなかったアントマンだったり、ホークアイだったりがチームに加わってどうなるのかに注目しています。現在残っているメンバーの多くは地球で戦ってきた人たちなので、もし宇宙に出ていって戦うことになるのであれば、キャプテン・マーベル、ソー、ロケットが活躍するのではないかと。

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中谷  個人的には今度の映画は『シビル・ウォー』から続く三部作の最終作という認識なんです。あの段階でアベンジャーズが分裂してしまって、そのことに決着がつかないまま、サノスが登場した。だから、アベンジャーズが集結してサノスに立ち向かうということは『シビル・ウォー』の問題が何らかの形で決着がつくことになる。それにみなさんの話を伺っていて思ったんですけど、やっぱり『エンドゲーム』は”サノスに勝ちました”では終われない。まだどんな映画も描いてこなかった結末が待っている気がしています。

―入倉さんのお言葉を借りるなら”出会ったことのない状況”が描かれることになりそうですね

政氏 こうして話をしてきて、改めてマーベルはすごくユニークな映画を作り続けてきたんだなぁと思いましたし、その最後をリアルタイムで観られるのは今しかないわけです。だから、10年続いた物語の最後を劇場でみんなで一緒に体験すること自体を楽しみたいです。

入倉 初めて海外取材したのがマーベル映画だったりもするので個人的にはこれまでの思い出が蘇ってくるんですよね。『アイアンマン』を映画館で観た時のことも思い出しますし。それは取材している私たちもファンのみなさんも同じだと思うんです。そんなシリーズがちゃんと完結する。そのことに感謝していますし、この10年を一緒に過ごしてきた人たちと共に映画を楽しみたいと思っています。

中谷 2019年に『エンドゲーム』が公開されてMCUがひとまずの結末を迎えたってことは後世にも残ると思うんです。だから10年ずっとMCUを追いかけてきた人も、何本かしか観ていない人も一緒に映画館に集まって、いつか”あの時、公開時に映画館で『エンドゲーム』を観た”って言いたいですよね。

入倉 ちなみに僕は公開前日は取材に行って、みなさんの感想を聞く予定になっています!

中谷 行かれる方は入倉さんに声をかけてあげてください!

入倉 マーベルのロゴの入ったトレーナー着て取材に行きますので(笑)

参加メンバー

『アベンジャーズ/エンドゲーム』4月26日(金)公開

  • 最強たちの、逆襲が始まる—

    人類半滅、アベンジャーズ崩壊──最後に残されたのは、最強の絆。

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